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中国リポート

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 全中国選手権の女子団体戦で、個々のレベルの高さで優勝を決めた遼寧省。しかし、王楠・郭躍・常晨晨というレギュラー3人はいずれもサウスポー。ダブルスが右と左で組めないことから、超級リーグでもダブルスが最大の課題となっている。もし遼寧省出身である李暁霞が山東省に移籍していなければ、郭躍/李暁霞という若手最強ダブルス、そして王楠・郭躍・李暁霞というドリームチームが完成していた。同様に男子チームも選手の流出がなければ、馬琳・馬龍・張超・王建軍らが揃う強豪チームになっていただろう。

 中国では現在、スポーツ選手が登録する省・市を移籍することが珍しくない。2005年には国家体育総局が「全国運動員注冊与交流管理法(全国のスポーツ選手の登録および交流管理法)」を施行。人材の交流を促進して、全国での均等なスポーツの発展を狙ったものだが、結果的には一流選手のスカウト合戦を招いている。
 また、北京市、上海市といった中国の都市部では一人っ子政策の影響で、両親がスポーツより学業を重視するようになり、才能のある少年選手の発掘が難しくなっている。そこで地方から有望な少年選手を引き入れて育成するケースが増えてきた。遼寧省出身の馬琳・劉詩ブンは、少年時代にコーチとともに広東省に移籍し、同じく馬龍も、北京市のコーチにスカウトされて遼寧省を離れている。
 逆に選手のほうから都市部の体育学校・卓球学校を受験するケースもある。もちろん、「より良い環境を求めて」というのが最大の理由だが、もうひとつの側面がある。中国には都市籍と農民籍というふたつの戸籍があり、都市籍を持っていれば医療費や年金など多くの面で優遇される。農村部の人たちにとっては、都市籍の獲得はかなり困難なのだ。子どもを北京市など都市のチームに入れ、都市籍を獲得させようとする親がいるのも不思議ではない。
 才能ある選手が特定の強豪校・チームへ一極集中する状況は、中国も日本と変わらない。しかし、その裏には日本とはまた違った、中国ならではの事情があるようだ。

Photo:遼寧省からの流出組のひとり、山東省チームのエース・李暁霞
●全中国選手権・女子ダブルス準決勝
郭躍/李暁霞(遼寧省/山東省) 5、3、-7、10、9 彭陸洋/李楠(山東省/天津天保控股)
丁寧/劉詩ブン(遼寧省/山東省) 6、8、7、10 曹臻/姚彦(八一工商銀行/武漢宏大)
●決勝
郭躍/李暁霞 5、4、-6、4、-5、9 丁寧/劉詩ブン

 全中国選手権、女子ダブルスは現世界チャンピオンの張怡寧/王楠(北京市/遼寧省)が出場せず。世界選手権2位の郭躍/李暁霞(遼寧省/山東省)が順当な優勝を飾った。現世界チャンピオンの郭躍は団体に続いて今大会2つ目のタイトル、李暁霞は初タイトル。北京五輪団体戦ではダブルスがカギを握るだけに、シングルスでタイトルを逃した李暁霞にとっては、ギリギリ及第点の優勝となった。
 シングルス・混合ダブルスを制した劉詩ブンは、丁寧とペアを組んで決勝に進出。惜しくも敗れて個人戦3冠を逃したが、今大会の活躍は強烈なインパクトを残した。

 全中国選手権終了後、中国卓球チームは同じ無錫市で、2軍男女チームのコーチ(ヘッドコーチ各1名・コーチ各4名)の選考会を開催。国家チームのコーチの選考会は2005年から行われているが、13人が参加した今回の選考会では、選考委員会の前で現国家チームコーチ9名、地方チームコーチ4名がこれまでの実績や、今後の国家チームの戦略などについて発表を行った。選考委員会による無記名投票で2軍のコーチ陣の陣容が決定する。
 1軍チームのコーチは任期が4年(2009年まで)のため、今回は選考会は行われなかったが、報告会で男女チームの監督が今シーズンの総括を行った。

「女子チームの1年間の成績には満足している。世界選手権ザグレブ大会でベスト4を独占しただけでなく、参加したすべてのプロツアーで女子シングルスの優勝・準優勝を独占した。成績の上では、来年の北京五輪に向けて非常に良い下地を作ることができた。(~中略)五輪代表候補たちの故障については、まだ完全に解決されたとは言えない。王楠や張怡寧についても、故障やケガが成績に影響を及ぼしている。医療チームなどとともに、より万全を期した練習プログラムを作る必要がある(施之皓・女子チーム監督)」
「2007年は男子チームにとって最も成績のよい1年だった。6人の重点強化選手(王励勤・馬琳・王皓・馬龍・陳杞・ハオ帥)が、今年の国際大会の中でいずれもシングルスのタイトルを獲得したことには満足している。これはチーム全体の実力が向上しているということだ。王皓、馬龍、陳杞、ハオ帥といった若手選手たちのレベルは、王励勤、馬琳に次第に接近し、チーム内の競争は日増しに激しくなっている。(劉国梁・男子チーム監督)」

 一昨日の2日から、国家チームはITTFプロツアー・グランドファイナルに向けた調整に入っている。今年度の予定は26日にすべて終了、明けて来年1月5日から、35日間の集合訓練が行われる。会場は世界選手権団体戦が行われる広州、久々に男女合同での集合訓練になる予定だ。

Photo上:施之皓監督、心配なのは選手の故障だけか?
Photo下:全中国選手権を制した郭躍/李暁霞ペア
●全中国選手権・男子シングルス準々決勝
王皓(八一工商銀行) 4、6、5、5 胡冰涛(上海体校曹燕華隊)
王励勤(上海市) -8、-8、9、6、6、5 陳剣(浙江省)
馬龍(成都市) 5、6、-7、8、7 陳杞(江蘇省)
張継科(八一工商銀行) -2、8、8、-9、6、6 馬琳(汕頭市)
●準決勝
王皓 5、-3、10、9、5 王励勤
馬龍 7、6、7、7 張継科
●決勝
王皓 -9、9、5、5、9 馬龍

 実力者が順当に勝ち上がって迎えた全中国選手権・男子シングルス準々決勝。唯一の波乱は今大会好調を維持していたハオ帥が、ベスト8決定戦で張継科(チャン・ジィカ/八一工商銀行)に敗れたことか。張継科はさらに勢いに乗って準々決勝で馬琳をも破った。ジュニア時代から代表経験の長い選手だが、そろそろ頭角を現してきても良い頃だ。
 もうひとり、健闘が光ったのは胡冰涛(フ・ビンタオ)。国家チーム以外の選手で唯一ベスト8に入ったカットマンだ。昨年11月、アジア競技大会直前のエキシビション・マッチでなんと張怡寧と対戦。しかもストレートで敗れているのだが、今回の活躍で国家チームの首脳陣へ大きくアピールした。

 この男子シングルスで最も話題を集めた一戦が、準決勝の王皓vs.王励勤。今シーズンに入ってから王皓にまったく歯が立たない王励勤の戦いぶりに注目が集まったが、この試合も三球目攻撃の威力とバックハンドの攻撃力(!)にまさった王皓に軍配。この6カ月間だけで、王励勤は王皓に4連敗となってしまった。
 2004年アテネ五輪準決勝で王励勤は王皓に敗れているが、それまでは王励勤のほうが圧倒的に分が良かったため、「決勝での対戦を想定して勝利者操作が行われたのでは?」という声も上がった。そして4年後の北京五輪、今度は王皓のほうが圧倒的に分が良い中で大会を迎えることになりそうだ。29歳の王励勤、身体能力はいまだに国家チームのトップクラスだが、最後の大舞台を前にやや焦りの色が見える。

 王励勤との一戦を余裕を持って切り抜けた王皓は、決勝でも馬龍を寄せ付けず、今シーズンの好調ぶりを改めて印象づける優勝を飾った。まだどこかあどけなさを残しているが、その強さは相手をねじ伏せるような迫力がある。
 王皓のプレースタイルは、10年前なら想像することさえ困難だったはずだ。時には下回転も混ざるという変化の激しい裏面フリックと、中陣からでも打ち抜ける破壊力のある裏面ドライブ。劉国梁や馬琳の裏面打法はあくまで後発的・補助的な技術だが、王皓のバックハンドの攻撃力はまさしく世界ナンバーワン。加えて美しいフォームから放たれるフォアドライブも威力と安定性を兼ね備えている。カットマンには滅法強く、苦手な戦型がない。
 あえて攻略方法を探すとすれば、裏面ドライブをフォアで狙っていくこと、フォア前にボールを集めること、そしてフォアクロスの打ち合いに持ち込むことがポイントになりそうだ。もちろん、北京五輪までにはそのわずかな弱点を徹底的に修正してくるだろう。
 世界ランキング1位の王皓、現在金メダルに最も近い男であることは間違いない。

Photo上:今月15日に24歳を迎える年男、王皓
Photo下:強靭な手首を生かした裏面フリック。安易にマネすると手首が危ないです!

〈全中国選手権・女子シングルス〉
●準々決勝
郭躍(遼寧省) 2、10、8、-11、3 丁寧(成都市)
李暁霞(山東省) 6、5、9、3 陳晴(江蘇省)
郭炎(北京市) 6、8、5、-9、-8、8 彭陸洋(山東省)
劉詩ブン(広東省) 7、6、7、8 木子(八一工商銀行)
●準決勝
李暁霞 5、-12、3、-7、-8、8、7 郭躍
劉詩ブン 7、-9、-8、6、-8、7、10 郭炎
●決勝
劉詩ブン -3、-8、4、7、4、9 李暁霞
※王楠は棄権

 全中国選手権女子シングルスでベスト8に入った選手の平均年齢は19.87歳。ジュニア世代の劉詩ブン(16歳)、丁寧(17歳)、木子(18歳)をはじめ、最年長の郭炎でもまだ25歳。中国国内は北京五輪の代表メンバーの話題でもちきりだが、全中国選手権にはすでに2012年ロンドン五輪への胎動が感じられる。決勝は混合ダブルスを制した劉詩ブン(雨かんむり+文)(リウ・シウェン)と、準決勝で世界チャンピオンの郭躍に競り勝った19歳の李暁霞(リ・シャオシア)の10代対決となった。

 序盤、ゲームカウント0-2とリードを許した劉詩ブンだが、第3ゲームからは一気に攻勢に出る。第3、4ゲームを奪ってゲームカウント2-2のタイに戻すと、第5ゲームは1-4のビハインドからなんと10本連取の離れ業を演じ、一気に優勝へ王手。第6ゲームはやや勝利を意識してリードされる場面もあったが、最後は10-8のチャンピオンシップ・ポイントから李暁霞のドライブがネット。北京五輪の代表候補選手に注目が集まる中、劉詩ブンが鮮やかに優勝をさらった。逆に北京五輪の3番目の椅子を狙う李暁霞にとっては痛恨の敗戦となった。

 次第に大型化している中国女子チームの中では小柄な身長155cm。コートを離れると笑顔のかわいい女の子に戻る劉詩ブン。身長が低く、早くから頭角を現していることから「小トウ(登+おおざと)亜萍」というあだ名がある。ちなみにトウ亜萍は1986年の全中国選手権で、なんと13歳で優勝している。
 しかし、バック面のツブ高ショートでラリーの時間をコントロールしたトウ亜萍に比べ、劉詩ブンは真っ向勝負の両面裏ソフトドライブ型。それでいて張怡寧(身長168cm)、郭炎(身長172cm)、李暁霞(身長174cm)といった同じ両面裏ソフトのパワーヒッターたちを打ち破るのだから、彼女がどれほどのセンスの持ち主かよくわかるだろう。決勝終了後に脱水症状に近い状態になり、ドーピング検査(尿検査)が1時間半以上かかって報道陣をやきもきさせたそうだが、最後まで戦い抜いた体力・精神力は見事。

 表彰式では副賞として、無錫市の名産である紫砂の急須(きゅうす)をひとつ送られた劉詩ブン。実は混合ダブルスの表彰でも、ハオ帥と一緒に急須を受けとったのだが、ひとつしか貰えなかったためにハオ帥が劉詩ブンに譲っていた。「この急須はハオ帥に渡そうと思います。今はちょうどひとりに一つずつだから…」。16歳の新女王は初々しいコメントを残した。

Photo上:昨シーズンは広東佐川急便チームでプレーした劉詩ブン(06年超級開幕戦)
Photo中:前陣での両ハンド強打が最大の武器(05年全中国運動会)
Photo下:あこがれの選手だという福原愛選手とニッコリ(06年超級開幕戦)
●男子ダブルス準決勝
王励勤/馬琳(上海市/汕頭市) 7、-9、7、-6、-1、5、3 張継科/周斌(八一工商銀行/遼寧省)
王皓/馬龍(八一工商銀行/成都市) -9、8、-6、6、5、7 ハオ帥/張超(天津天保控股/広東省)
●決勝
王励勤/馬琳 8、7、10、7 王皓/馬龍

 全中国選手権・男子ダブルス決勝は27日に行われ、中国男子チームのツートップ、王励勤/馬琳が決勝で王皓/馬龍をストレートで下し、初優勝を飾った。

 準決勝で若手の周斌/張継科(遼寧省/八一工商銀行)をゲームオールで下し、決勝に駒を進めた王励勤/馬琳。奇しくも「王・馬対決」となった決勝では、ゲーム序盤でリードされながらも中盤で6オール、7オールに追いつき、終盤で突き放すという戦いぶり。王皓/馬龍も第3ゲームで7-10から10-10に追いついて意地を見せたが、このゲームを12-10で奪った王励勤/馬琳がそのままストレート勝ちを収めた。

 06年9月にクアラルンプールで行われたエキシビションマッチ「中国 vs. ワールドオールスターズ」でダブルスを組んでいるが、公式戦でのペアリングは今年6月のフォルクスワーゲンオープン中国大会が初めてだった王励勤/馬琳。もともと王励勤には閻森(00年シドニー五輪複優勝)という名パートナーがいたし、馬琳は陳杞と組んで04年アテネ五輪で優勝している。王励勤の安定感のあるドライブ攻撃と、馬琳の果敢なカウンター・台上攻撃がかみ合えば相当強いペアになりそうだが、これまではダブルスを組むことがなかった。

 「決勝での僕たちのプレーはとても良かったと思う。この前のスウェーデンオープンで僕たちは王皓/馬龍のペアに負けているけど、その試合で多くの問題点が見つかった。だから今日の試合に備えて、その問題点については十分な準備をしてきた」と試合後に語った王励勤。王励勤・馬琳という中国卓球界の「竜虎」が北京五輪に向けて力を合わせれば、中国男子チームの壁はさらに厚いものになりそうだ。

Photo:今年6月のフォルクスワーゲンオープン荻村杯の表彰で、偶然並んだ王励勤と馬琳。表彰ではなぜか離れていることが多い…
●全中国選手権・混合ダブルス準決勝
王励勤/郭躍(上海市/遼寧省) -8、7、7、7、-7、4 魏炎涛/麦楽楽(広東省)
ハオ帥/劉詩ブン(天津天保控股/広東省) -9、7、7、-8、10、7 王皓/李暁霞(八一工商銀行/山東省)
●決勝
ハオ帥/劉詩ブン 9、-7、-8、6、11、9 王励勤/郭躍

 全中国選手権・混合ダブルスは26日に決勝が行われ、準決勝で王皓/李暁霞、決勝で世界選手権2連覇中の王励勤/郭躍を連破したハオ(赤+おおざと)帥/劉詩ブン(雨かんむり+文)が初優勝を決めた。
 ともに1ゲームずつ取り合うシーソーゲームとなり、2-2のタイで迎えた重要な第5ゲーム。9-7で王励勤/郭躍がリードするものの、ハオ帥/劉詩ブンが反撃に出て13-11とこのゲームを奪取。続く第6ゲームは常に優位に試合を進め、11-9で優勝を決めた。現世界チャンピオンペアに果敢に挑んだ若手ペアに、会場からは大きな声援が飛んだ。

 「劉詩ブンと組むのは初めてで、試合前には特に打ち合わせもしなかった。三球目攻撃が良かったので主導権が取れた(ハオ帥)」「今日は私たち二人とも心理状態が良かった。自分たちの力は出せました(劉詩ブン)」。郭躍に続く天才少女の呼び声も高い劉詩ブンが、次第にその天分を現してきたようだ。

Photo上:ハオ帥、団体戦に続いて好調をキープ(05全中国運動会より)
Photo下:16歳で全中国選手権のタイトルを獲得した劉詩ブン(06超級開幕戦より)
★★★ 全中国選手権 女子団体 ★★★
●準々決勝
遼寧省 3-0 湖北省
山東省 3-2 山西汾酒
江蘇省 3-1 四川川威
武漢宏大(湖北省) 3-0 八一工商銀行
●準決勝
[遼寧省 3-0 山東省]
○郭躍 4、5、9 陳夢
○常晨晨 4、8、5 李聖潔
○王楠/常晨晨 8、11、4 呂雪/李聖潔
[武漢宏大 3-0 江蘇省]
○馮亜蘭 -8、13、7、4 范瑛
○姚彦 9、-7、9、8 陳晴
○馮亜蘭/劉純 11、4、5 陳晴/楊柳
●決勝
[遼寧省 3-1 武漢宏大]
○郭躍 -6、9、6、-10、6 武楊
 常晨晨 7、7、-9、-7、-3 馮亜蘭○
○王楠/常晨晨 4、4、-9、2 馮亜蘭/姚彦
○郭躍 7、8、-9、8 姚彦

 全中国選手権・女子団体は、王楠・郭躍・常晨晨というフルメンバーで挑んだ遼寧省が、第1シードを守って順当な優勝。昨年に続く2連覇を決めた。
 今年度の超級リーグを制し(北京首創)、優勝候補の筆頭と目された北京市は、エースの張怡寧が故障で欠場し、郭炎も団体戦を欠場。3番手の丁寧も男子の馬龍と同じく成都市チームから出場するなど、2軍メンバーでの戦いを余儀なくされ、決勝トーナメントにすら進出できなかった。同じく優勝候補の山東省は、準々決勝に出場した李暁霞・彭陸洋がなぜか準決勝の遼寧省戦に出場せず、遼寧省に完敗を喫している。こういった点で、やはり全中国選手権は今ひとつボルテージの上がらないところがあるようだ。
 準優勝の武漢宏大は、10月の城市運動会に出場したメンバーで大躍進。エースの馮亜蘭以外は多省の出身者だが、3人とも長身で身体能力が高い。将来の中国女子チームを担うメンバーになりそうだ。

Photo:決勝では接戦を制して2点獲り、チームの2連覇に貢献した郭躍
Photo:決勝で遼寧省から一矢報いた馮亜蘭。パワーあふれる卓球はポスト郭炎か
★★★ 全中国選手権 男子団体 ★★★
●準々決勝
八一工商銀行(解放軍) 3-0 四川全興
遼寧省 3-0 広東省
天津天保控股 3-2 湖北省
江蘇省 3-2 上海市
●準決勝
[八一工商銀行 3-0 遼寧省]
○王皓 3、-7、-9、12、7 徐輝
○雷振華 6、5、8 周斌
○王皓/張継科 -6、10、-4、10、10 周斌/ジャク一鳴
[天津天保控股 3-2 江蘇省]
○李平 8、8、-8、10 林晨
○ハオ帥 -10、6、9、-10、8 陳杞
 李平/劉希博 -5、-9、-6 陳杞/單明杰○
 劉希博 -10、-3、-8 林晨○
○ハオ帥 3、9、8 單明杰
●決勝
[八一工商銀行 3-1 天津天保控股]
 王皓 -8、-5、-9 ハオ帥○
○雷振華 11、7、-6、9 李平
○王皓/張継科 5、10、7 李平/劉希博
○雷振華 11、6、3 劉希博

 馬琳が欠場したものの、王励勤、王皓、馬龍、陳杞、ハオ帥と国家チームの一線級が顔を揃えた全中国選手権・男子団体戦。各チームのエースとして戦った彼らにとっては、かなり明暗の分かれる結果となった。
 まず最初に脱落したのが馬龍。北京市チームと成都市チームの提携により、成都市チームに出向中(?)の馬龍だが、単複2点獲りもむなしくベスト8決定戦で敗退。続いて現世界チャンピオンの王励勤率いる上海市が、準々決勝で陳杞のいる江蘇省に敗れた。しかもラストで王励勤が若手の林晨(左シェーク攻撃型)に敗れるという大誤算。ここ2カ月ほど不調の王励勤、中国国内では早くも五輪出場を危ぶむ報道が流れている。

 一方、国家チームの選手の中で、最も華々しい活躍を見せたのは天津天保控股(天津市)のハオ帥。準決勝では陳杞とのエース対決をゲームオールで制し、ラストではともに“六小龍”と称された單明杰をストレートで撃破。勢いそのままに、決勝トップでも世界ランキング1位の王皓をストレートで破った。チームは準優勝に終わったものの、男子団体戦ではMVP級の活躍を見せた。
 劉国梁男子チーム監督も「国家チームから北京五輪の出場メンバーを選ぶ過程から、決してハオ帥が外されたわけではない」とまたまた意味深な発言。ハオ帥が五輪代表になる可能性は限りなく低いが、首脳陣のこのような発言は、最後まで選手たちの緊張感を保つ狙いがあるのだろう。

Photo上:サウスポーからパワフルなドライブ攻撃を見せるハオ帥
Photo下:お疲れ気味の現世界チャンピオン・王励勤。五輪を前に奮起なるか

 昨日25日、北京市朝陽区にある中華人民共和国外交部(日本では外務省に相当)で、「中国外交と北京五輪」と題して一般市民への開放イベントが行われた。
 外交部を訪れた一般市民に囲まれ、スポーツウェアに身を包んで巧みな球技を披露したのは、現在オリンピック村の副村長として大忙しのトウ(登+おおざと)亜萍と、外交部長(外務大臣)の要職にある楊潔虎。ふたりは混合ダブルスも組み、学生選手のペアを相手に見事勝利を収めた。
 その他にも、2004年アテネ五輪と2012年ロンドン五輪の開催国であるギリシャ、イギリスの駐中国大使が外交部を訪れたほか、米NBA(プロバスケットボール)で活躍する姚明もビデオレターで祝辞を述べ、会場を沸かせた。

「私は選手として海外の試合に参加した時、その国の人たちから温かい拍手と激励を受けました。来年はそれと同じように、すべての中国国民が世界各国の選手たちに対して、温かい声援を送ることを願っています」と述べたトウ亜萍。歴史的な五輪イヤーはもう目前に迫っている。

 現外交部長の楊潔虎は1950年生まれの57歳。外見は実に温厚そうだが、その名前と寅年生まれということから「老虎楊(タイガー・ヤン)」の愛称がある。駐米中国大使などを歴任した中国きってのアメリカ通だが、1971年のピンポン外交によるアメリカ・中国間の雪融けムードの中で、英語のエキスパート養成のためにイギリスへ派遣されたのがそのキャリアの第一歩。卓球とも縁遠からぬ人物なのだ。

Photo:北京五輪の顔として活躍中のトウ亜萍(91・95・97年世界選手権優勝/92・96年五輪単複優勝)

 かつて中国の伝統的スタイルと言われたペンホルダー速攻型は、本家・中国においてもすでに希少な戦型になっている。常に多彩な戦型を育成するというのが中国卓球の伝統。そのため、全中国運動会や全中国選手権の団体戦では、ペンホルダー速攻型を「保護」する次のような規定がある。
 「女子団体の登録メンバーには、各チームにつき必ず1名、ペンホルダー速攻型の選手を含まなければならない。男子団体ではペンホルダー速攻型か、カット主戦型の選手を必ず1名含まなければならない」。
 もっとも、今回の全中国選手権の団体戦は北京五輪と同じで、各チーム3名ずつが出場する4単1複の試合方式。登録されたペンホルダー速攻型やカット主戦型の選手は、王皓や馬琳、侯英超といったトップ選手を除いて、ほとんどが補欠に回ることになるだろう。

 日本でもかつて全国中学校大会や、全国ホープス大会には「各チームに必ず1名、ペンホルダー表ソフト速攻型の選手を含まねばならない」という規定があった。中国も以前はペンホルダー「表ソフト」速攻型に限定していた。卓球を始めた時、ペン表ソフト速攻型だった偉関晴光選手(当時:韋晴光)は、ジュニア時代にコーチに裏ソフトを勧められた時、「団体戦に出られなくなるかもしれない」ので裏ソフトには変えたくなかったそうだ。
 しかし、現在はペンホルダーならば、裏ソフトやツブ高を使用しても構わないため、実質的にはペンホルダーの保護策と言ったほうが正しいかもしれない。そしてメンバーとして登録されるペンホルダー速攻型のほとんどが裏ソフトの使用者だろう。
 ペン表ソフト速攻型危うし。第二の江加良、第二の劉国梁は果たして現れるのだろうか。

Photo上:独特のサービスフォームが今では懐かしい劉国梁
Photo下:06年世界ジュニア複優勝の姜海洋。若手では数少ないペン表ソフト速攻型だ